センチメンタルな京都の夜(前編)

京都に住んでいたことがある。
当時大学生だった僕はアルバイトを2つしていた。ひとつは家庭教師。小学5年生の中学受験のための家庭教師で、親の期待が高く、子どものやる気が低い、という気が滅入る仕事だった。
もう一つは料理屋の板前。
これは大変だが楽しかった。
実際にお店に出す料理を作らせてもらえた。そこで湯葉の巻き方や焼き物や揚げ物、雑炊の作り方やサラダの盛り付けなどなどいろいろと料理を学んだ。
店は三条の木屋町通を少し入ったところにあった。
夫婦2人でやっている店で、高級な京料理の店ではなく、ちょっと変わったマスターがちょっと変わった創作料理を出す店だった。
マスターは元FBIで英語がペラペラで身体がデカくて顔が厳つい人だった。
僕らはマスターのことを「お父さん」と呼んでいた。
お父さんは、面白くてこだわりがあって人間味のある人だった。
お母さんも良い人で、おしゃべりが好きで世話好きな人だった。
そこにアルバイトにくる大学生たちはみんなお父さんとお母さんを慕っていた。
僕はいろいろあって一年で大学を辞めたので、このアルバイトも一年間しか出来なかった。当時、大学は辞めたけどこの仕事は続けたいな〜と馬鹿な僕は思っていた。

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今日、久々に京都に来て時間があったので、四条河原町から先斗町木屋町通を通って、そのお店があった場所へ行ってみた。
前に寄らせてもらってからもう10数年たっていた。
当時70歳近かったご夫婦だったからもう閉まっているだろうと思っていた。
もう無いだろうけど、その面影だけでも写真に収めて帰ろうと思って、記憶を頼りに三条をぶらついていたら、なんと、お店が
、まだ、あった!!
まだお父さんお母さんは存命なのだろうか?僕のことを覚えてくれてあるだろうか?などと考えてて、少し緊張して店に入った。



(後編に続く)かもしれませんし、続かないかもしれません。